書籍・雑誌

雑草にも名前がある

以前ご紹介したヘルマン・ヘッセの『庭仕事の愉しみ』もそうですが、私には、時々思い出してはパラパラと捲って興味を引いた章だけを読むという本があります。

Photo_84雑草にも名前がある』(文春新書/草野双人著)もそんな本の1冊です。

この本は、エノコログサ、スズメノカタビラ、西洋タンポポ、ヤブガラシ、ドクダミなどといった、園芸好きには目の敵にされそうな雑草から、オミナエシ、ホウチャクソウ、カラスウリなどの、都会に住んでいる身には自生していたら羨ましいような植物を取り上げ、人間から邪魔者扱いされながら人間世界に巧みに適応してきた雑草の生態を書いているのですが、むしろ、雑草の話を枕に、社会から除け者扱いされ忘れ去られようとしている有名無名の人物の生涯にスポットを当てた読み物になっています。

私の庭は雑草だらけなのですが、雑草といって抜き捨てることが惜しまれる花にイヌタデがあります。庭の片隅に咲いたイヌタデを見て、この本を開いてみました。植物名に「イヌ」と付く場合は「役に立たない物」を意味する場合が多く、この、ほこりを被って咲いているイヌタデもそんな植物と思われがちですが、この本によると、下痢や皮膚病に効く薬になるそうで、なかなか侮れないものです。

私はどうも判官贔屓というかマイナーな物に興味があるようで、現在、開催されているサッカーのワールドカップでも、敗れても個性があり、強烈な印象を残して去ったいった選手や先進国とは言えない国のチームに惹かれます。サッカーは全く詳しくありませんが、アルゼンチンのクレスポ選手(いかにもインディオという感じ)、チェコのネドベド選手(市民の力で民主化をなしとげたチェコという国自体に興味があるのと、まさしく孤軍奮闘といったプレーが美しかった)が印象に残りました。もっとも彼らは世界のトップクラスの選手ですが。

有名無名のスポーツ選手のことを描いた本で好きなのは『敗れざる者たち 』(文芸春秋社/沢木耕太郎)です。『深夜特急』などは、多分若い男性なんかにとってはバイブルのような本で、これも好きな本の一つですが、『敗れざる者たち』では、勝負の世界で、いつか、いつかと望み続け、しかも『いつか』はやってこない選手や競走馬の悲哀を描きつつも、それでもまだ人生の勝負はついていないと筆者は語ります。

ふと庭に目をやると、抜いたはずのところにドクダミの芽が...

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コヤツはたしかに『敗れざるもの』です...。

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虫愛づる姫君

先日、私の庭に珍客が来ました。鳥のメジロのような美しい鶯色をした生き物で、その羽音の大きさと美しい姿に、「オニヤンマ?それとも蜂?もしかして鳥?」と驚いている間に、どこかに飛び立ってしまいました。

冷静に考えて、スズメガの一種だろうと見当を付け、小学生の時から愛用している学習用の昆虫図鑑を調べ、どうやらオオスカシバという蛾らしいと分かったあと、インターネットで検索し確信できました。それが下の画像です。

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この画像は昆虫館の運営者であり撮影者の中橋徹氏より
許可を得て、加工・掲載しております。
一切の権利は中橋氏に帰属します。

オオスカシバの名前は漢字で書くと「大透かし羽」で、画像を拡大してご覧になると分かるように、透明の羽を持っています。それにしても美しい蛾ですね。

できればもう一度庭に遊びに来てくれればいいな、と思っているのですが、インターネットで見た幼虫の姿を見ると、やはり、訪問は歓迎するけど住みついて欲しくはないなぁと思ってしまいました。尤も、以前、紫式部(ムラサキシキブ)に、種類までは分かりませんが、スズメガの幼虫が住みついたときは、これだけ大きい(体長10cmくらい)と、何となく表情まで分かるような気がして愛着が湧き、丁度、冬に剪定し忘れて茂りすぎだったこともあり、好きなだけ葉を食べさえたことがありました。

やって来る虫も小さな庭の小さな自然の一部...とは言え、育てている植物を丸坊主にするようなヨトウムシやチャドクガは、可愛くも何ともないので見つけ次第駆除していますし、イモムシ、毛虫の類は、ふいに目にするとやっぱりギョッとします。こんな私は、とてもではないけど、「虫愛づる姫君」にはなれないなぁと思います。

虫愛づる姫君ってご存知ですか?
そう、堤中納言物語(つつみちゅうなごんものがたり)に登場する、あのユニークな姫君です。堤中納言物語とは、平安期に成立したといわれる短編小説集で、「虫愛づる姫君」を含む、独立した11話の物語で構成されています。

私が「虫愛づる姫君」を読んだのは、たしか高校生の古文の時間に、抜粋した文章を読んだのが最初だったと思いますが、とても面白い話で、対訳版を読み、さらに数年後に瀬戸内晴美氏の『私の好きな古典の女たち』(新潮社)に取り上げられているのを知って、この本で氏の素晴らしい解説と共に再読しました。

粗筋を簡単に説明すると、按察使(あぜち)の大納言の姫君という虫好きの姫君が主人公で、近所に住む蝶好きの姫君と比較され、家族や周囲の人からその風変わりな趣味を嘆かれていました。ですが、姫君は一向に介することなく、「世間の人が花や蝶を美しいものとして褒めそやしているのは浅はかよ。人間は誠実で、ものの本体を正確に探求しているのこそ、その人との気性も面白いというものだわ」などと言ったり、「特に毛虫が趣があって可愛いわ」と、童子達に変わった虫を集めさせては、その成長を観察していました。この姫君に興味を持った上達部の右馬佐(かんだちめのうまのすけ)もユニークで、毛虫のように毛深いあなたの様子を見てしまってから、あなたのことばかり、とりもちのように身から離れなくなりました。」などいう意味の歌を贈ります。(この姫君は、うっとうしいと言って、化粧やお歯黒もせず眉も抜かないので、それが毛虫のようだと思われていたようです)

聡明で、侍女によれば“お化粧すれば可愛い”けど、生意気で変わり者の姫君ですが、平安時代に書かれたものとは思えないほど、肯定的に描かれています。

 

さて、我が家の姫君(私)はというと、今夜も懐中電灯片手に「虫テデトール姫君」です。

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山野草

都会育ちのせいか、山や野に生える山野草に惹かれます。子供の頃、学習図鑑を見るのが好きで、図鑑のイラストを見て、イラストだから尚更なのか、見てみたいと思う山野草が幾つかありました。(尤も、その図鑑の中で一番見てみたいと思った花はラフレシアでしたが...。)

素朴だけど美しい草姿もそうですが、昔から日本に自生している草花の名前は、謂われを知るとなるほどと思うものがあったり、字面がきれいだったり。よい名前が当てられて、幸せな植物もあれば、ヘクソカヅラとか、気の毒な名前が付けられていたり、面白いと思います。(ヘクソカヅラのために、灸花-やいとばな-という別名も挙げておきます。花の中心が赤くて、灸のように見えるからだそうです。)

山野草を切り花で見る機会は少ないですが、茶席では立派に主役の一人になります。私は花をオブジェのように扱う技巧的な生け花はあまり好きではないのですが、茶花は、千利休が「花は野にあるように活け」と言ったように、野山にある時のように、凛とした姿で活けられています。

あ、今、気づきました。私が好きな植物は、「凛としている」という共通点があるのかも知れません。

風炉の茶花この本は茶花の作品集ですが、花材の植物の育て方も載っていて、また、普段、道ばたや山に咲いている山野草が、このように素敵な素材になると言うことを教えてくれます。ヤブレガサもすました顔で登場します。

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ミヒャエル・ゾーヴァとエルケ・ハイデンライヒ(Michael Sowa und Elke Heidenreich)

もう、先月のことですが、銀座松屋で18~23日に開催された「ミヒャエル・ゾーヴァの世界展」に行ってきました。

浅学なことに、私はミヒャエル・ゾーヴァ氏の作品は全く知らなかったのですが、新聞に掲載されていた幾つかの作品ユーモアがあってちょっとシュールな絵が気に入り、初日に行ったところ、日本だけではなく、世界中に多くのファンがいるということを知りました。(作品の画像は貼ることができないので、下の方にゾーヴァ氏が挿し絵を描いた本のリンク画像を貼りました。女性好みの絵でしょ?)

日本語に訳された本の挿し絵となっている作品は、ほのぼのとしたメルヘンチックな絵が多いようですが、ちょっとブラックでシニカルな作品も多いのは、第二次世界大戦で陥落した直後のベルリンに生まれ、冷戦下の同都市で成長したことに影響を受けているのでしょうか?

この美術展では、ゾーヴァ氏の作品を知ったことも嬉しかったけど、もう一つ、併設されていたショップで購入した本で、エルケ・ハイデンライヒという作家のことを知ったのも、大きな収穫でした。私は趣味でドイツ語を勉強しているので、是非、何か原書を手に入れたいと思ったのですが、この頃のユーロ高のせいか、原書はどれも高価でした。その中で、比較的手に入れやすい値段の本が「エーリカ あるいは生きることの隠れた意味」(原題:Erika, oder der verborgene Sinn des Lebens.)というタイトルのエルケ・ハイデンライヒの本でした。比較的易しいドイツ語なのと、あまり長い物語ではないこと、そして魅力ある内容に、夜中までかかりましたがその日の内に一気に読み終えてしまいました。

物語は、ベルリンに住む、高収入だけど仕事に追われて疲れた、離婚経験のある女性、ベティの呟きで始まります。「私ったら、まるで生きることを忘れてしまったみたい...」 (※1)そして、クリスマスを目前に控えたある日、以前、一緒に暮らしていたフランツから電話が入ります。「一緒にここでクリスマスを過ごさないかい?」 フランツに会おうと決めたベティは彼へのプレゼントを探しにデパートに行き、そこで等身大の豚のぬいぐるみ、エーリカと出会い、引きつけられるように、そのぬいぐるみを買うのです。ベティに抱かれたエーリカは人を幸せな気分にする不思議な力があるようです。そして...

しみじみとした読後感のある良書でした。

彼女(著者)のその他の本も読んでみたくなり、さっそくネットで検索したところ、コピーを読んで気になったのが、Kolonien der Liebe(出版社:Rowohlt Taschenbuch Verlag)という9つの物語が収録された短編集。残念ながら翻訳は出ていないようですが、これもドイツ語の勉強と、ゾーヴァの画集などと共に紀伊國屋書店のサイト(※2)で注文し、今日、手元に届きました。

あ~、今日も寝られない。

※1 翻訳を読んでいないので、私の訳です。ヘタでゴメンナサイ。

※2 このサイトは初めて利用しましたが、出荷状況もこまめにメールで連絡してくれるし、5000円以上の購入の場合は送料が無料になるだけでなく、その後30日間の注文も送料無料の対象となるのでお勧めです。

エーリカ あるいは生きることの隠れた意味 Book エーリカ あるいは生きることの隠れた意味

著者:ミヒャエル ゾーヴァ,エルケ ハイデンライヒ
販売元:三修社
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エスターハージー王子の冒険 Book エスターハージー王子の冒険

著者:ミヒャエル ゾーヴァ,イレーネ ディーシェ,ハンス・マグヌス エンツェンスベルガー
販売元:評論社
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