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カラス

雑誌の書評欄で知った「カラスはなぜ東京が好きなのか 」(平凡社/松田道生著)という本を読了しました。そして、カラスに対するイメージがすっかり変わりました。

この本では、主に東京にいるカラス=ハシブトガラスの生態について書かれていますが、カラスが人を襲う凶暴な鳥であるとか、里山が荒廃したためにやむなく都会に暮らす鳥といった、言わば都市伝説のようなものがいかに間違った認識かというのを教えてくれました。

本来森の中に住むはずのハシブトガラスが都会にいるのは、人間の目には異常なことのように思えますが、銀座のようなビルの乱立する場所は、カラスにとっては高い木のある森のようなもので、歩道に置き去りにされているゴミを漁るのは、地面を歩くネズミを捕まえるようなものだそうで、要するに、カラスにとっては都会の環境が森とよく似ているのだそうです。そう言われてみれば、私の住んでいるところは、住宅街なのでビルは少なく、そのせいか、カラスはあまりいないようです。多分、時々見かけるカラスは近所の公園にでも住んでいて、たまにゴミなどを漁っているだけなのかもしれません。嘴の細いハシボソガラスは野原のような開けた場所を好むので、農地などに多く、これも、この辺りの環境は生息には適さないのでしょう。

番(つがい)のカラスは子育てのための巣を作り、縄張りを持ちますが、人を襲うほど凶暴になるのは、抱卵期や子育てをしている最中だけのようです。基本的には、カラスが一番恐れるのは同じカラスで、人間が巣に関心を示すようなそぶりを見せなければ、カラスは監視しているだけだそうです。たまたま、公園の遊歩道の近くに巣を作ったりして、そのつもりが無くとも、来園者が巣に向かって歩くような状態だと、雛を守るために攻撃をしかけるので、時々人を襲うカラスがニュースになったりしますが、カラスにしてみれば、自分たちが襲われていると思っているのでしょうね。

外敵にやられるのを見越してたくさん卵を産むスズメやカルガモなどと違って、2~3個の卵しか産まないカラスは、とても丁寧に子育てをするそうで、本の中の、雨の日に親鳥が翼を広げて雛をかばっているイラストには、感動すら覚えたほどです。なお、カラスは巣立ちの後も比較的長く親鳥と過ごすそうで、親鳥とさほど大きさの変わらない若鳥が共にいることから、親の面倒を見ていると思われて「烏に反哺(はんぽ)の孝あり」という言葉ができました。

烏に反哺の孝あり:烏が雛のとき養われた恩に報いるため、親鳥の口に餌を含ませて返すということ。子が成長の後、親の恩に報いる喩え。

捕鯨問題を論じる人たちの間では「スーパーホエール」という言葉があります。「乱獲されて絶滅の危機に瀕しているシロナガスクジラ」や「ホエールウォッチングで見る優美なクジラ」、「ショーなどに使われる頭のいいクジラ」、「傷ついた仲間をかばうかのような仕草をするクジラ」といった、別々に見ているはずのクジラの光景から、「絶滅の危機に瀕している、頭の良い美しいクジラ」という頭の中で作り上げた虚構のクジラのことを指す言葉です。実際には、ある種のクジラは数が増え、水産資源である魚がクジラの餌になり減少しているのですが、そういった情報はマスコミでは取り上げられないために、クジラは可愛いとか保護しなくてならないというイメージを抱いてしまいがちです。人間を識別したり、道路にクルミを落として車に割らせる頭の良いカラスは「ずる賢いカラス」に、子供を必死で守ろうとしている姿が「凶暴なカラス」になり、スリラー映画などでの扱いも加わって、カラスは逆の意味で、スーパーカラスのようなイメージを作られてしまったような気がします。

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